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2008年1月19日

杉板

新しい住宅の計画地を確認に、福岡市西区の住宅地を訪ねました。

10年ほど前に開発された住宅団地は、まちなみが整いつつあります。
一つ一つの住宅にデザインが施され、外装材料も、外構のしつらえも多様でにぎやかです。
しかし、そのにぎやかさが、妙に画一的に見えてしょうがありません。
その原因のひとつは、外装に使われている様々な「汚れにくい建材」ではないかと気づきました。

「汚れにくい建材」は汚れないことによって、何か大切なものを失っているのでは?
”汚れちまった”おじさんとしてはそんなことを思ったのです。


私の通勤路にある木造2階建ての古い住宅です。
外壁が杉の板貼りで木製の華奢なサッシがついています。
もう人は住んでいないのかもしれません。
屋根や壁や窓には補修の跡があります。
板金笠木のついた、ま新しいコンクリートブロック造の塀と対比して
建物外壁の杉板がなんともいい感じに古びています。

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次も通勤路にある、書道家の先生の自宅かなと思わせる住宅です。

下部は杉板型枠の打ち放しコンクリートで、上部は杉板張りの外壁。
杉板のネガとポジ。
駐車場床は赤土のタタキで、車止めは太い竹で作ってあります。
通路もスロープも固めの三和土。
向こうの塀は細い竹で編んであります。

汚れやすく、傷つき易い材料がそのメンテナンスを前提に使われている。
住む人とともに、建物が時間を刻む安心感。

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私が時々引っ張り出しては読む宮本常一さんの表紙に
笹の向こうに、木目が浮き出た杉板外壁が写っていました。

日本中を歩いて、古からの生活や膨大な民話を集めた宮本常一の
本の杉板下見板張りにも、ていねいに補修された跡がありました。

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コメント

鳥肌立ってしまいました。びっくりしました!拝見していたら、何となくイメージしていた写真が出てきましたので。宮本さん、私も大好きです。「忘れられた日本人」も、本当に好きな本で、宮本さんには、たくさんのことを教えて頂きました。私の生きるベースとなっています。そうそう、村長さんは、「あの人に会いたい」は、ご覧になられましたか?http://www.nhk.or.jp/archives/anohito/past/2006/122.html想像通りの、とても穏やかな方でした。こみ上げてくるものがありました。すみません、長々と。とにかく、興奮して、モニタの前で、叫んでしまいました…。

2年程前に自分の島国のことや、百姓のことや、職人のことが知りたくて、宮本常一、網野善彦、阿部勤也さんなどを目につくままに読んでいたことがありました。
その頃には読んだ内容をすぐに話し合える一番の友人がそばにいて、酒を飲んでは一夜漬けのくせに、つばを飛ばしてしゃべっていました。
残念ながら「あの人に会いたい」の宮本さんを見ていません。
「たくま」さんとの共通点に、いつもいつも驚いています。ありがとうございます。