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UIA GOLDEN CUBES AWARDS最優秀賞を受賞
江北町の永林寺保育園は曹洞宗永林寺境内の東斜面に沿って、立体的に配置された平家の園舎です。
竣工直後から第二園『ひとのねこども園』の構想が始まり、永林寺保育園から2.5km離れた、まだ稲作が行われている水田が建設地に選ばれました。
その年の秋、稲刈りの終わった田んぼに、子どもたちと稲藁を集めに行くことからこの「藁小屋づくり・・・」ワークショップは始まりました。
永林寺保育園の園庭に藁小屋をつくり、1年間子どもたちに遊び倒された小屋の藁は朽ちて、「ひとのねこども園」の左官壁に練り込まれました。
この地域での小さな試みに、よろこんで参集してくれた庭師、藁葺、左官の職人さんたちのおかげで、デンマークでのうれしい受賞になりました。
ありがとうございました。
花西海 グランドオープン
ご縁を頂き、設計・監理を進めていた長崎県東彼杵郡波佐見町の西海園芸フラワーショップが「花西海」として2022年4月28日(金)にグランドオープンします。
足場解体直後、オープンに向けて施主でもある庭人 山口陽介氏率いる「庭西海」の造園工事が進行中です。
内部は少し残工事がありますが、これから内部は素敵なお花で満たされて行きますので、波佐見に寄った際にはお花を買いがてら建物もご覧ください。
全国の素晴らしいプロフェッショナルたちが波佐見に集い、協働した建物です。折を見て、見学会も開催できればと思います。
施主 (有)西海園芸 花西海 山口勇介 山口祥子 庭西海 山口陽介
設計・監理 (有)設計機構ワークス 坂口佳明 坂口舞 担当:井佐子恵也
構造 (株)黒岩構造設計事ム所 黒岩裕樹
施工 (株)上山建設 上山誠 監督:琴野広樹
外構 (有)西海園芸 庭西海 山口陽介
茅葺 (株)くさかんむり 相良育弥
左官 左官都倉 都倉達弥
家具 nomade design 蔵谷亮介
照明 株式会社モデュレックス 塚本洋子
藁小屋作りの稲藁集め
佐賀江北町永林寺保育園の棟上げ式
今年最高気温を記録した土曜日、永林寺保育園の上棟式が、屋根工事進行中の遊戯室の中で行われました。
園長先生のお父様住職が祭主で、厳かな読経の声が遊戯室の屋根架構に響きます。
式の後は、びっくりするような数の地域の人々や子どもたちが集まって盛大な餅まき。
長年地域に貢献してきた曹洞宗永林寺さんと、70年以上地域の子どもたちを見守り
育ててきた永林寺保育園が、みなさんに大切にされていることが伝わってきました。
2000個のお餅と700袋のお菓子の準備も本当に大変だったでしょう。
猛暑の中、園長先生はじめ保育士の先生たちのご苦労に頭が下がります。
園舎の形も出来上がり、今から建築も外構植栽も仕上げに入っていきます。
地形を生かした多様な居場所に、子どもたちのうれしい声がひびくのが今から楽しみです。
イタリア乳幼児教育学びのツアー③
遅くなりましたが「イタリア乳幼児教育学びのツアー」第3回目のレポートを書き綴ります。
6月19日(火)午前、ピアッツァ(広場)で週1回ほど開催されるバザーを横目にし、足早にパニッツィ図書館を訪れる。(早起きしなかったことをとても後悔…)
パニッツィ図書館はイエズス会貴族のための建物をリノベーションしたものです。
ペダゴジスタ(教育学者)と共同して、こどもの動きを考慮し、書架の配置を決め、各空間にコーナーはあるが、行き止まりのないデザインになっています。
館内では、スタッフが読み聴かせをしていたり、こどもが声を出して本を読んでいたり、静かにしなければいけない部屋があったり、日本の図書館とは少し印象が違います。
ペダゴジスタはレッジョ・エミリア(アプローチ)では重要な役割を担っており、さまざまなところで登場します。また、小児科医とも共同し、こどもの推薦図書を選定したりと、こどもに関わる職業のつながりが顕著に見られます。
パニッツィ図書館では司書の「エリザベッタ」(写真右)が主に対話をしてくれました。
「図書館は静かな場所でなく、活動の場所」だとエリザベッタは言います。言葉の通り、パニッツィ図書館では多くのイベントを行っています。例として挙げると、
「本を読む楽しみだけでなく、描く楽しみを感じてもらうためにこどもたちが絵本を描き、1冊の本にして図書館に置く」イベントや、
「YVES KLEIN*1のように自分で色を作り、色のレシピを描き、色の名前をつける」イベントなどを行っています。(画質が悪いですがこどもが描いた色のレシピと色の名前)
このようにパニッツィ図書館ではこどもたちの創造的な可能性を広げる活動を行っています。
「図書館の在り方とはどのようなものか」という私たちの問いにエリザベッタは「こどもと本の接点をつくる場所」と。
また、「本は好きか」という問いに対しては「本は読まない、好きでもない。情熱が本から人にシフトした」とも言っていました。
パニッツィ図書館はこどもと本との接点つくるという「こどもの創造的な教育」や、人と人との接点をつくる「活動的な場」としての役割をもっていました。
最近の日本でも図書館の在り方が変化している事例など多々あるなと思い、勝手な対抗意識を持ったりした濃密な時間でした。
第4回はレッジョ・エミリアのロスタ・ヌオーヴァ地区で独創的な活動をしているピッツァーニ小学校の保護者団体との対話をお届けします。
*1 YVES KLEIN – イヴ・クライン。フランスの画家で自ら顔料を開発し、「インターナショナル・クライン・ブルー」と名前のついた青を作りだした人物。
イタリア乳幼児教育学びのツアー②
「イタリア乳幼児教育学びのツアー」第2回目のレポートを書き綴ります。
6/18(月)、ミラノから1時間半ほど電車に揺られて、モデナという街に。
まずはみんなでアルビネッリ市場で昼食。中世から続く市場らしく、チーズはもちろん、新鮮な野菜、魚、肉、果物など多種多様なものが並んでいます。
そこから20分ほど移動し、イタリアの建築家「ミケーレ・ジーニ」と対話しました。
ミケーレはレッジョ・エミリア・アプローチを実践している乳幼児施設のデザインガイドラインを作成した方です。多数の乳幼児施設を設計していて、日本ではオルト保育園(高田馬場)の基本設計を担当。
以下にデザインガイドラインに記載されている乳幼児施設設計における9つの大事な要素を並べます。(あえて訳さず本文そのままで載せます)
・Multisensoriality and soft qualities
・Atelier
・Piazza / Central square
・Kitchen
・The Archipelago classroom
・A territory for learning
・Furniture
・Sustainability
・The school as a territorial hub
感覚的なこと、空間そのもの、空間を構成する要素など多岐にわたります。対話では主に上4つを丁寧に語ってもらいました。
「デザインガイドラインを決めても人によって解釈はそれぞれ。大事なところは抑えつつも、施主、設計者によって十人十色の建物ができる」とミケーレは言っていた。(左は通訳の小林さん)
デザインガイドラインといっても凝り固まった縛りのあるものでなく、とても柔軟性に溢れた可能性を広げるものだと感じました。
今回のツアーで共通するキーワードは「柔軟性」、「可能性」あたりだと思います。これから書き綴るレポートでも要所ごとに感じてもらえるはずなので、頭の片隅に置いて頂けると幸いです。
第3回はレッジョ・エミリアにおいて図書館がどのような役割を担っているかなど、パニッツィ図書館の司書「エリザベッタ」との対話をお届けします。
続く