篠栗山荘
「茂木謙悟さんを囲んで」建築を語る会は㈱渡辺藤吉本店の研修所篠栗山荘を会場にさせていただきました。
この山荘は昭和2年の建設で、作庭も普請も見事な和風建築でした。
近年補修工事がされたらしい楠一枚板の上り框の玄関には栴檀の強い香りがしています。
渓流を取り込んで、造られた庭は梅雨の湿潤な空気のなかに、みどりが溢れています。
夜更けには蛍がチラチラと舞い、渓流の水音が響いて、体験したことのないほど幽玄で、しかも心落ち着く6月の夜でした。
庭に面した広縁は全面が木製ガラス戸です。
今の建築基準法では不可能なつくりです。
戦後作られた建築基準法が低いレベルの木造技術を前提にしていることを、この秀逸な建物が80年もって凛としていることで証明しています。
「しっかり造られた建物は80年経ってもピシッとしてるんですよ。」
茂木さんが建物の随所にある見所をわかりやすく解説してくれました。
3間飛ばした広縁の丸桁はこんなにも細くストレートで、隅木の納まりもすっきりしています。
「この建物の一番の圧巻は、広縁の丸桁と隅の軒裏ですよ。桁に荷重がかからんようにハネギが使われていて、天秤のようになっとるんです。部材の選定もとんでもないもんです。」
畳、面付柱、欄間の造作、襖絵、床のリュウビン、障子、楠のムク板の家具などなど、茂木さんの和風建築の実地解説は、とどまることがありません。
茂木さんの最近の寺社関係のお仕事もスライドで紹介されて、たくさんの刺激を受けました。
参加者の一番の感想は、茂木さんにいろんな建築を解説しながら案内してほしいというもの。
贅沢な望みでしょうが、でももしそれが叶えば、どんなに素晴らしいことかと思った一日でした。
塚本さん企画してください。
今回はごくろうさまでした。
そして、渡辺藤吉本店の堀越さんありがとうございました。
篠栗山荘の庭の紫陽花が、日が落ちかけた梅雨の曇り空に輝いていました。
紫陽花は日光が当たっているときよりも、湿気につつまれた薄暮のほうがずっと色あざやかになるのですね。
また、ひとつ、勉強しました。