星野道夫
「彼はクマに襲われて亡くなった。
つまり事故である。事故には偶然が大きくかかわる。
ちょっとした時間と位置のずれ、条件のわずかな違い、自然の気まぐれがあれば、別の結果になっていたはずだ。
だから遺された者にとって、彼の死という事実は受け入れがたかった。
彼が次の冬にアラスカで撮ったはずの写真、次の夏にシベリアのモンゴロイドの人々について書いたはずの文章、フェアバンクスで、あるいは東京で、あるいは沖縄で自分と会って過ごしたはずの時間、一緒にできた旅、などなど、奪われたものを心はまだねだっている。」
いささか詩的すぎる解説-池澤夏樹
去年の夏に事故で逝った親友吉田圭一郎が見下ろしている長崎の港