旅をする木
「それは早春のある日、一羽のイスカがトウヒの木に止まり、浪費家のこの鳥がついばみながら落してしまうある幸運なトウヒの種子の物語である。
さまざまな偶然をへて川沿いの森に根付いたトウヒの種子は、いつしか一本の大木に成長する。
長い歳月の中で、川の浸食は少しずつ森を削ってゆき、やがてその木が川岸に立つ時代がやってくる。
ある雪解けの洪水にさらわれたトウヒの大木は、ユーコン川を旅し、ついにはベーリング海へと運ばれてゆく。
そして北極海流は、アラスカ内部の森で生まれたトウヒの木を遠い北のツンドラ地帯の海岸へとたどり着かせるのである。
打ち上げられた流木は木のないツンドラの世界でひとつのランドマークとなり、一匹のキツネがテリトリーの匂いをつける場所となった。
冬のある日、キツネの足跡を追っていた一人のエスキモーはそこにワナを仕掛けるのだ・・・一本のトウヒの木の果てしない旅は、原野の家の薪ストーブの中で終るのだが、燃え尽きた大気の中から、生まれ変わったトウヒの新たな旅も始まってゆく。」
「旅をする木」-星野道夫
7年ほど前に、三瀬峠の古い茅葺民家を借りて、竹炭を焼いているカップルに逢った。都会の広告代理店を辞めて、わらぶき民家で子供を産んで、裏山の竹林の竹を焼いていた。そこの名前が「旅をする木」
ずっと気になっていました。
先月、南区で「ルドルフ・シュタイナー・・」って書いてある店を見つけて、立ち寄ったら、「旅をする木」のパンフレットが置いてあった。今では養鶏も手がけて、小野寺睦さんの田舎暮らしは進化していました。
600羽の放し飼いの鶏が産む卵は大人気だそうです。
そして先日、本屋に寄ったら、「旅をする木」という星野道夫さんのエッセーを偶然見つけた。
たまたま「青い月」の中川さんが事務所に寄られたので、本の話をすると、星野さんが自分の愛した野生のクマに殺されたことを教えてくれました。
とても言葉が深く、映像的な心にしみるエッセーです。彼の言葉の向こうには、私の知らないアラスカや、知ってるはずの小さな地球が鼓動しています。